トピックスTopics
- 2021/11/23 社員自殺は労災、7歳娘と失踪、長時間労働でうつ認定
- 2021/11/12 雇調金特例、2022年1月から段階的縮小へ=厚労省方針
- 2021/10/28 正社員「副業している」8%、株・FXが最多、民間調査
- 2021/10/17 マイナンバーカード、健康保険証にも、20日から本格運用
- 2021/09/17 トヨタ社員自殺、二審は労災認める 「パワハラでうつ発症」
- 2021/09/09 原発事故作業で咽頭がん発症の2人を労災認定
- 2021/08/21 雇用調整助成金の特例措置、11月末まで延長=厚労省
- 2021/08/21 違法残業、8904事業所で確認=厚労省
- 2021/03/18 ワタミ、労基署から是正勧告、宅食で協定超える残業
- 2021/02/12 雇調金特例6月まで延長、経営や地域の感染状況で差
- 2021/01/26 日本医大病院へ是正勧告、「無給医」問題で労基署
- 2021/01/18 企業で働く障害者57万人、17年連続、過去最多
- 2021/01/16 公的年金4年ぶり減額へ、21年度、0.1%程度のマイナス
- 2021/01/04 従業員出向に1日1.2万円、厚労省が助成、人材活用促す
社員自殺は労災、7歳娘と失踪、長時間労働でうつ認定2021/11/23
2017年に工作機械メーカー「ソディック」(横浜市)の社員、大泉共生さん(当時43)が自殺したのは、恒常的な長時間労働でうつ病を発症したのが原因として、松本労働基準監督署(長野県松本市)が労災認定していたことが22日、遺族側代理人弁護士への取材で分かった。大泉さんは亡くなる直前、長女、愛菜さん(当時7)を連れて失踪し、2人は遺体で見つかった。無理心中を図ったとみられる。
労災認定は20年1月31日付で、発症直前1カ月の時間外労働は123時間だった。同社は今年7月、解決金を支払うことで妻(48)ら遺族と和解したが、直接の謝罪には応じていない。妻は「この苦しみは死ぬまでと思っている。会社は直接謝罪してほしい」と話した。
同社は22日、ホームページに「社員がお亡くなりになったこと、労基署からの是正勧告を深く反省し、再発防止対策を検討・実施する」とのコメントを掲載した。
代理人の岩城穣弁護士らによると、大泉さんは12年から松本営業所(松本市)で機械のメンテナンスを担当したが、16年5月以降、担当業務の人員が2人から1人に減らされ業務が増加。同僚からの嫌がらせもあった。
17年4月21日、大泉さんは会議で上司から顧客先を架空訪問したと事実に反する疑いを掛けられ、追及を受けた。帰宅後、大泉さんは「今日は本当にひどかった。つるし上げだよ」と漏らした。
大泉さんは同26日、愛菜さんを連れて乗用車で出かけ、同5月7日、2人の遺体は山形県内の林道に止めた車内で見つかった。練炭を燃やした跡があった。
松本労基署は、17年4月上旬ごろにうつ病を患ったと認定した。上司に追及を受けた会議について「自殺の誘因の一つとなった可能性が高い」と、医師らでつくる専門部会の意見を付けた。〔共同〕
令和3年11月22日(月曜日)日本経済新聞電子版
雇調金特例、2022年1月から段階的縮小へ=厚労省方針2021/11/12
厚生労働省は雇用調整助成金を増額する新型コロナウイルス対応の特例措置を2022年1月から段階的に縮小する方針だ。売り上げが大幅に減った企業など向けの手厚い支援は当面続ける。19日に決定する経済対策に盛り込む。政策の軸足を雇用維持から労働移動の支援へと徐々に移す。
雇調金は企業が従業員に払う休業手当の費用を助成する制度。通常は1人1日約8300円の上限額を今は1万3500円に引き上げている。1月から1万1千円、3月から9千円に下げる。売り上げが急減した企業などは最大1万5千円とする特例は21年度いっぱい維持する方向で調整する。
コロナに伴う雇調金の支給決定額は5日時点で4.8兆円に迫る。21年度の雇調金の財源は使い切り、他事業の資金を活用してまかなっている。
雇調金は失業を防ぐ半面、過大な支援が長続きすれば労働市場の調整機能をゆがめかねない問題がある。今後は人手不足が深刻な産業への転職支援などを強化する方針だ。21年度補正予算で手当てする。
令和3年11月11日(木曜日)日本経済新聞電子版
正社員「副業している」8%、株・FXが最多、民間調査2021/10/28
パーソルキャリア(東京・千代田)が実施した副業の実態調査によると、「副業をしている」と答えた人は8%にとどまったことがわかった。副業の内容は「株・FX(外国為替証拠金)」が2割で最も多かった。働いている企業で副業が認められていると答えた人は約2割にとどまり、副業の浸透にはまだ時間がかかりそうだ。
調査は全国の正社員として働く22〜59歳の男女を対象に、インターネットで8月に実施した。1万5000件の有効回答を得た。
現在働いている企業で副業が認められているかどうかを聞くと、「認められている」が23.3%だった。一方で「禁止されている」は52.6%と半数を超えた。副業について「検討中」と答えた人は17.8%だった。
副業の内容を複数回答で尋ねると、「株・FX」が21.1%で最も多かった。時間の制約が少なく、比較的高額な取引がしやすい点から、副業として選択する人が多いようだ。「ネットビジネス」(12.7%)や「ホームページ・CG(コンピューターグラフィックス)などの制作」(7.9%)も目立った。
副業で得られる平均月収は約17万円だった。月平均で10万円以上稼ぐ人の割合は34.4%だった。地域別で見ると、東海が約23万円で最も高かった。次いで北海道が約21万円、関東が約20万円だった。
副業をやってよかった点を複数回答で聞くと、「収入増」が77.5%で最も多く、「本業以外のスキルアップ」は34%だった。パーソルキャリアは今後の副業の動向について「新型コロナウイルス下のリモートワークの普及を追い風に、副業を活用する動きは広がるとみられる。企業も優秀な人材の確保や流出を防ぐ意味でも、副業を解禁し始めており、多様な目的で実施率は上がっていくのではないか」と分析する。
令和3年10月27日(水曜日)日本経済新聞電子版
マイナンバーカード、健康保険証にも、20日から本格運用2021/10/17
マイナンバーカードが20日から健康保険証として使えるようになる。医療機関や薬局でカードを示せば保険証提示は不要になる。専用サイト上で自身の健康情報が確認できるようにもなる。ただ開始時点で利用できるのは全医療機関の1割にも満たない見通しで、利用者は事前の確認が必要だ。交付率が4割にとどまるカード普及の原動力となるには力不足なのが現状だ。
マイナカードは表面に顔写真や氏名、住所が記載され、裏面にマイナンバーが記載されている。2016年から交付が始まった。国家公務員の身分証をマイナカードに一体化するなど利用範囲は徐々に広がり、発行開始から5年以上を経て健康保険証としての運用が始まる。
健康保険証として利用すれば、転職や引っ越し時に保険証を発行し直さなくて済む。専用サイト「マイナポータル」で過去に処方された薬の情報や特定健診の内容を閲覧できる。他の医療機関で受けた特定健診の情報を医師と共有する機能もあり、自身の健康状態を伝えやすくなる。
11月からは自分が使った医療費を閲覧できるほか、21年分所得税の確定申告から医療費控除の手続きもできるようになる。医療機関でもらった紙の領収書などを1枚ずつ管理する手間を減らせる。
医療機関や健康保険組合も業務効率化の利点がある。受付の事務処理を効率化できるほか、診療報酬を誤って請求するといったミスも減ると期待されている。
野村証券の健康保険組合は23年4月以降、約6万人の加入者の健康保険証をマイナカードに一本化する。組合所在地が変わる際、事務を効率化できる。従来の保険証は特段の事情がない限り発行しない。23年3月までにほぼすべての医療機関などが対応するとの政府目標を見据えた対応だが、足元で使える医療機関や薬局がまだ少ないことが最大のネックだ。
患者がマイナカードを健康保険証として利用するためには医療機関や薬局がシステム対応を済ませている必要がある。厚生労働省のまとめでは、システム改修などの準備を終えた医療機関・薬局はわずか8%程度。利用機会が多い診療所(歯科を除く)では3日時点でわずか5.8%にとどまる。
政府目標では21年3月までに医療機関などの6割が導入完了する予定だった。データ確認に手間取ったほか、半導体不足によるIT機器の調達遅れなどが影響した。厚労省は機器の一部を無償提供するほか補助金制度も設け、導入を促しているが、対応は鈍い。
医療機関側が準備を終えていなければ患者側は従来通り、健康保険証を持参しなくてはならない。厚労省が9月に開いた社会保障審議会の部会では出席委員から「システム的にはまだ途中経過」「(取り組みが)うまくいくかどうかの大きな分岐点」との厳しい指摘が相次いだ。厚労省に普及への工夫を求める声も目立った。
カード自体の普及も遅れている。総務省によるとカード交付率は全住民の4割に届いていない。政府はマイナカードの申請者や保有者を対象に買い物で使えるポイントを付与するなど普及策をとってきたが行き渡っていない。
NTTデータ経営研究所とNTTコムリサーチが6月に実施した調査によると、カードを持っていない人のうち35%が「なくても生活ができる」と回答し、「利用したいと思えるサービスが少ない」も25%だった。
カードは運転免許証との一体化なども想定されている。普及の後押しには、まず健康保険証としての利用を早期に軌道に乗せる必要がある。
令和3年10月17日(日曜日)日本経済新聞電子版
トヨタ社員自殺、二審は労災認める 「パワハラでうつ発症」2021/09/17
トヨタ自動車の社員だった男性(当時40)が2010年に自殺したのはパワハラや過重労働によるうつ病が原因として、遺族が労災認定を求めた訴訟の控訴審判決が16日、名古屋高裁であった。古久保正人裁判長は「上司からの叱責(しっせき)と業務により精神的負荷を受けていた」と述べ、労災と認めなかった一審・名古屋地裁判決を取り消し、訴えを認める逆転判決を言い渡した。
男性は1990年に入社し、エンジン部品の生産に従事。09年10月ごろにうつ病を発病し、10年1月、自殺した。遺族側は遺族補償給付の支給などを申請したが、労働基準監督署は「業務上疾病に該当しない」として不支給とした。
古久保裁判長は、男性が上司から同僚の面前で大声で威圧的な叱責を1年近くにわたって反復、継続して受けたことが「態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」と認定。心理的負荷が「強」にあたると判断した。
昨年7月の一審判決は、上司からの叱責や業務内容による心理的負荷は、精神障害を発病させるほどではなかったと判断。「男性がうつ病を発症したことと業務に因果関係は認められない」として、遺族側の請求を棄却していた。
令和3年9月16日(木曜日)朝日新聞デジタル
原発事故作業で咽頭がん発症の2人を労災認定2021/09/09
厚生労働省は8日、東京電力福島第1原発事故後の収束作業などに従事し、咽頭がんを発症した2人について、がんと作業による放射線被曝(ひばく)との因果関係を認め、労災認定したと発表した。厚労省によると、原発事故を巡るがんの労災認定としては7、8例目で、咽頭がんは初としている。
厚労省によると、認定されたのは東電社員として従事した男性と、東電の協力会社社員で労災申請後に死亡した男性。2人は2011年3月の事故後、福島第1原発でがれきの撤去や放射線量測定業務などに当たり、作業での被曝線量はそれぞれ約85ミリシーベルトと約44ミリシーベルトに上った。
2人は18〜19年に咽頭がんと診断され、労災を申請。専門家らによる厚労省の検討会が先月30日、被曝との因果関係を認め、富岡労働基準監督署(福島県)が今月6日、労災認定した。〔共同〕
令和3年9月8日(水曜日)日本経済新聞電子版
雇用調整助成金の特例措置、11月末まで延長=厚労省 2021/08/21
緊急事態宣言が延長されたことを受け、厚生労働省は17日、雇用を維持した企業の休業手当を支援する「雇用調整助成金」(雇調金)について、特例措置の期限を9月末から11月末に延ばすと発表した。
特例措置は、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象地域で、働き手1人あたりの日額上限を1万5千円、助成率を最大10割とするもの。対象地域以外では原則、日額上限が1万3500円、助成率が最大9割になっている。
令和3年8月17日(火曜日)朝日新聞デジタル
違法残業、8904事業所で確認=厚労省2021/08/21
厚生労働省は20日、2020年度に長時間労働が疑われる全国約2万4千事業所を調べたところ、37%にあたる8904事業所で労使協定を超えるなどの違法残業が確認されたと発表した。
全国の労働基準監督署が実施した監督指導の結果をまとめた。16年度分から結果を公表しており、対象事業所に占める割合は最低だった。
新型コロナウイルスの影響による時短営業や、罰則付き残業時間の上限規制が中小企業にも導入されたことで、厚労省は違法残業の割合が減ったとみている。
違法残業が確認された事業所の中で1カ月当たり80時間を超える残業があったのは2982事業所で33.5%だった。このうち、月100時間を超えたのは1878事業所で21.1%だった。
令和3年8月20日(金曜日)日本経済新聞電子版
ワタミ、労基署から是正勧告、宅食で協定超える残業2021/03/18
ワタミは17日までに、弁当などを届ける宅食事業で労使協定で定める上限を超える時間外労働があったとして、高崎労働基準監督署(群馬県高崎市)から是正勧告を受けたことを明らかにした。勧告は15日付。同社は「真摯(しんし)に受け止め、全社を挙げて再発防止に努める」とのコメントを出した。
昨年9月に同事業の社員(休職中)に残業代の未払いがあったと是正勧告を受け、この社員の過去2年分の労働実態を調べた結果、昨年3月の残業が労使協定(36協定)の上限75時間を29分超えていたと判明した。
同社員の実際の労働時間や未払い賃金については、両者で交渉を続けている。
ワタミは再発防止に向け、勤怠システムの改修などの対策を講じたという。
令和3年3月17日(水曜日)時事通信社
雇調金特例6月まで延長、経営や地域の感染状況で差2021/02/12
政府は経営難の企業と感染拡大地域の外食業などを対象に雇用調整助成金の特例水準を6月末まで維持する方向で最終調整に入った。現行の特例を一律で適用するのは4月末までとし、5月以降は企業の経営状態と地域の感染状況で差をつける。大企業の非正規労働者に対する休業支援金は2020年春の休業分について賃金の6割を支給する。
12日にも発表する。休業手当を支払い、雇用を維持する企業を支援する雇調金は特例で上限を1万5千円、助成率を最大100%に引き上げている。一部の企業は厳しい経営環境が長引く恐れがあり、現行の支援策が当面続くことを早めに示して雇用の維持を促す。
「直近3カ月の売上高などの指標が30%以上減少」などを基準にする見通しだ。緊急事態宣言時に近い対策をとる「まん延防止等重点措置」の対象地域の外食店なども6月末まで現行特例が続く。その他の企業は5月以降、上限額は1日1万3500円に、助成率は最大90%にする。
大企業でシフト制や日雇いで働きながら休業手当をもらっていない人への支援金は20年4〜6月に遡って適用し、休業前の賃金水準の6割を支給する。大企業では同時期、働いていない日が休業なのかどうかを判断しにくいシフト制労働者らにも賃金の6割の休業手当を払っていた会社がある。不公平とならないよう同水準に合わせる。
一方、自治体が独自に飲食店などへ営業時間の短縮要請をした20年秋以降と、21年1月8日以降の休業には8割を支給する。中小企業の従業員が8割を受け取れることに合わせる。厳しい経営環境が続き、20年秋以降は大企業でも手当を支払えなくなったところが増えたとみて、中小と足並みをそろえる。
令和3年2月12日(金曜日)日本経済新聞電子版
日本医大病院へ是正勧告、「無給医」問題で労基署2021/01/26
日本医科大病院(東京)が、大学院生の医師に診療をさせたのに賃金を支払わなかったとして、中央労働基準監督署(同)から是正勧告されたことが26日、関係者への取材で分かった。労働として診療しているのに給与が支払われない「無給医」問題に関する是正勧告は異例という。
関係者によると、同病院は2019年10月から11月にかけての約2週間、外来診療をさせていた大学院生約10人に賃金を支払っていなかったことが判明。今月に入って労基署から是正勧告を受けた。労基署は院生が労働として診療をしており、賃金支払いが必要だと判断したとみられる。
無給医を巡っては文部科学省が19年6月、病院を持つ全国の国公私立大の学長に、適切な雇用・労務管理を行うよう通知。昨年2月には、18年9月時点で全国の59大学病院に2819人の無給医がいたとの調査結果を公表した。
文科省は昨年4月にも、新型コロナウイルスの診療に当たる大学院生らが増えているとして、給与を支払わない事態が起きないよう求める事務連絡を大学病院に出した。〔共同〕
令和3年1月26日(金曜日)日本経済新聞電子版
企業で働く障害者57万人、17年連続、過去最多2021/01/18
厚生労働省は17日までに、2020年6月1日時点の民間企業で働く障害者は57万8292人だったと発表した。前年から3.2%の増加で、17年連続で過去最多だった。対象企業の従業員に占める割合である雇用率も2.15%で過去最高を更新した。障害者雇用促進法に基づく法定雇用率の2.2%には届かなかった。
障害種別では、身体障害者は35万6069人(前年比0.5%増)で最も多かった。知的障害者は13万4207人(同4.5%増)で、精神障害者は8万8016人(同12.7%増)。
法定雇用率を達成した企業は全体の48.6%に当たる4万9956社。産業別では、雇用率が最も高かったのは医療・福祉の2.78%で、農林漁業と生活関連サービス業・娯楽業が2.33%で続いた。最も低かったのは教育・学習支援業の1.71%だった。
公的機関では都道府県の場合、雇用率は前年から0.12ポイント上昇の2.73%、市町村が横ばいの2.41%だった。
3月から民間企業の法定雇用率は2.3%に、国と自治体が2.6%に引き上がる。障害者雇用促進法は障害者の社会参加を促すため国と自治体、民間企業に一定割合以上の障害者を雇うよう義務付けている。〔共同〕
令和3年1月17日(日曜日)日本経済新聞電子版
公的年金4年ぶり減額へ、21年度、0.1%程度のマイナス2021/01/16
2021年度の公的年金の受給額は20年度に比べ0.1%程度のマイナスと微減になる見通しだ。マイナス改定は0.1%減だった17年度以来4年ぶり。賃金の低下が響く。20年の物価と賃金の変動率が確定する1月下旬に厚生労働省が正式決定し4月から適用する。
20年度の受給額は自営業者らが入る国民年金は満額で月6万5141円、会社員らが入る厚生年金は夫婦2人のモデル世帯で22万724円だった。
来年度から賃金変動率が物価変動率を下回って下落する場合に、賃金との連動を徹底する新ルールが導入される。賃金は小幅の下落となったもようで、新ルールが適用される。賃金と物価よりも年金給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」は発動しない。
年金額は物価と賃金の変動率に合わせて毎年度改定する。物価は前年の消費者物価指数(CPI)が指標で、20年1〜11月平均は前年比0.09%上昇した。新型コロナウイルスの感染拡大が響き足元では物価の下落圧力が強まっている。12月分も含めた年間平均では0%前後になる見通し。
もう一つの指標の賃金変動率は2〜4年前の上昇率で計算する。今回は0.1%程度の小幅下落となったもよう。このため賃金が物価を下回って下落する場合の新ルールが適用され、賃金変動に基づいて年金額が0.1%程度のマイナス改定されることになりそうだ。
これまでは賃金が物価を下回って下落した場合、年金額は物価に合わせて改定したり据え置いたりしていた。年金の保険料収入は賃金に伴って変動する仕組み。賃金が物価以上に下落した状況で年金額を物価に合わせると年金財政の悪化につながる。16年に法改正し21年度からの新ルール導入を決めていた。
年金額の伸びを物価や賃金の上昇率よりも抑えるマクロ経済スライドは賃金と物価の変動率がプラスの場合に実施する。21年度はマイナス改定の公算で発動が見送られる。その分だけ給付の抑制は効かないことになる。
令和3年1月16日(土曜日)日本経済新聞電子版
従業員出向に1日1.2万円、厚労省が助成、人材活用促す2021/01/04
厚生労働省は従業員を出向させる企業と受け入れる企業の双方を対象とする新しい助成金について1人あたりの上限額を日額1万2千円にする。これとは別に契約書の作成などにかかる費用に対し、それぞれの企業に最大15万円を支給する。
2020年度第3次補正予算案が成立した後の21年2〜3月に始める。賃金や教育訓練など出向にかかる経費の助成率は中小企業が最大90%、大企業が同4分の3にする。従業員を送り出す側の企業は新型コロナウイルス禍で事業活動が一時的に縮小を余儀なくされているところを対象にする。
出向は苦境に陥る企業の従業員が失業せずに、別の仕事を経験する機会となる。全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)などで広がっており、受け入れ企業にとっても柔軟に人手を確保できる利点がある。
休業者を抱える企業に資金支援する雇用調整助成金の特例は現行水準を2月末まで維持する。政府は現行の雇調金の助成率(最大100%)と日額上限(1万5千円)を3月以降、雇用情勢をにらみつつ少しずつ縮小し、5〜6月には出向者への助成金と同程度とする案を検討している。7月以降には出向支援の方が休業支援より手厚くなるように設定し、人材の有効活用を促す。
令和3年1月3日(日曜日)日本経済新聞電子版